書肆侃侃房
日本統治時代から現代にかけての台湾の歴史を、ある親子三世代の姿とともに描き出した物語。
同じ家族ではあっても生まれた時代や価値観にはずれがあり、そのせいで折り合いがつかず確執がくすぶっていてうまく向き合えないでいる。そんな親子の姿を描きながら、二二八事件や美麗島事件をはじめ、外国人就労者やダム建設の問題、いじめやLGBTなど今なお考え続けなければならない問題が巧みに織り込まれている。彼らがそれぞれ選びとった「公理と正義」が、これまでの、そしてこれからの台湾の未来をつくっていくのだろう。
「夜明けがいつ来るのか、誰にもわからなかった。けれども…(中略)…後退する者は誰もいない。前進だけが唯一の出口だと知っているからだ。前に進まなければ、彼らは永遠に闇夜の迷宮に閉じ込められたままなのだ。」──P.41表題作より
台湾が抱えた複雑な歴史を知るための、或いは私たち一人ひとりの生活と社会や政治との結びつきを考えるための、きっかけとなる真摯な問いかけを投げかけてくれる連作短編集。