香川本屋ルヌガンガ

台湾少女、洋裁に出会う母とミシンの60年

鄭鴻生 著/天野健太郎 訳

紀伊国屋書店


 女性が外で働くなんてもってのほか。そんな保守的な時代に、「主婦の友」など日本の雑誌に魅了されて、洋裁を志したひとりの台湾女性。周囲の反対を押し切って社会に飛び出し、懸命に働き、やがてはみずからの洋裁学校を開設する。そんな道なき道を開拓した台湾女性の個人史を、その息子が静かな眼差しで書き記した一冊。
 描かれるのは、歴史に刻まれることのない名もなき個人の人生。だけどそこには、台湾の歴史がタペストリーのように入り混っていて、私たちがよく知らない「台湾の近代史」が、確かな手触りを持って浮かび上がります。そして時に歴史の波に呑まれ、時に時代の波に乗りながら、前を向き懸命に生きる女の姿や、寝る間を惜しんで懸命に働き倹約に努める人々の姿は、昭和の日本人の姿とも重なっていて、どこか懐かしいような気持ちもなりました。
 日本と台湾の、一筋縄では行かない関係も濃厚に描かれています。それは、敵国であると同時に憧れの対象であるような、台湾人が日本に持っていた複雑な眼差し、というものを私たちに教えてくれます。


書影
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朱天文 著/樋口裕子・小坂史子 訳(竹書房)
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10月15日 ─ 11月末本屋ルヌガンガ

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当店は、4年ほど前にはじめた香川の新刊書店。本を売ることはもちろん、カフェ、イベント、お店やライブラリスペースの選書、通販などいろいろやっています。
お商売のやり方は、これまでの本屋とは少し違う形ですが、期せずして、自分たちがよく知った「ふつうの」本屋に近づいてきている気がしています。ご近所の喫茶店から宅配注文が入り、近所のお母さんに 『こどものとも』を定期購読いただき、サラリーマンからお年寄りまで本を探しにきてくださる。そんな風に、街の本屋として「ふつうに」使ってくださる方が多くなってきたように思うのです。
本屋にお客さまが来てくれるのは、当店が必要とされているということ以前に、本が必要とされているということ。時間をかけて積み上げられてきた、本に対する信頼、本屋に対する愛着という巨大なアドバンテージの上にお店が成り立っていることを日々実感しています。
そんな風に「過去とつながっていること」を意識しながら、本とお客さまの橋渡しができる本屋でありたいな、と思っています。


  • 本屋ルヌガンガ
  • 〒760-0050
  • 香川県高松市亀井町11-13 1F
  • 営業時間 10:00-19:00 火曜休