みすず書房
台湾の建築家、謝英俊。彼は幾つもの被災地で、現地に暮らす住人たちと共に家を建てる。そこに建築の新しい可能性があるからだ。被災という緊急を要する事態が家を必要とさせ、そして農村には自然(資材)がある。現地に暮らす農民たちは技術を有している。この3つの要素が建築家としての彼のアイデア、「協働セルフビルド」を可能にする。
家を商品として購入するのではなく、お互いの知恵と協働によって建設する。さらに建設に伴い高められた住人の建築技術は、その後、住人自身が趣味趣向を家に反映することに役立つ。「家」や「住まうということ」自体が商品化されてしまった現代において、彼のしていることは建築を通じた社会変革と野生の知恵の獲得として捉えることもできる。
地震、水害が多発し、今は経済的困窮に加え、コロナもある。日本ではまだあまり知られていない、謝英俊氏の困難から知恵と技術を生み出す活動に学ぶ点が大いにあるはずだ。